今回は銀行の店頭に来店予約を取り付けて相談しに行ったらどういう提案をいただけるのか、リアルな体験レポート(前編)をお届けします。
相談時間は証券会社編とほぼ同じ80分というけっこうな長丁場でした。
内容が長くなったため前後編に分けています。
前編は店舗到着⇒投資信託ラインナップに関する基本的説明までです。
- 第1回
- 第2回
- 第3回
- 第4回【前編】銀行の店頭で相談したらこうなった! (今ココ)
- 第5回
- 第6回
はじめに:登場する金融機関・人物
特定の銀行・担当者を非難する意図はないため、いずれも仮名で記載する。
銀行の店頭なんてどれも似たようなものだろうから、特定に意味はないと考えてのことだ。
なお、買付の意図なく冷やかし目的で行ったのではと邪推される可能性もあるので明言しておく。
私にとって納得できる提案であり、私のポートフォリオに加える価値のある商品だと判断できれば、私は別に購入しても良かった。
そういう腹積もりで行ったのだが、残念ながら納得に至らなかっただけである。
【相談当日】やはり銀行のシャッターを開けてもらうところから始まる
とある土曜の午前中。
来店予約を取り付けたあやふや銀行に到着するとATMコーナー以外はシャッターが降りていた。
休日にお金を引き出しに行くとよく見かける光景だ。
シャッター前に警備員と案内係らしき人がいたため来店予約をしている旨を伝え、シャッターを開けてもらえた。
通されたのは個室。
他の顧客がいるか定かではないが、気兼ねなく喋れるので気がラクだ。
ほどなくして20代半ばと思われる女性販売員が登場。
彼女が今回の担当、仮名田氏だ。
ときどき上ずる感じの声からそこまで百戦錬磨のベテランでもなさそうだということは第一印象で何となく分かった。
証券会社編のように毅然とした態度とポーカーフェイスで明らかな嘘をブッ込んで来るよりずっとマシかな、と思った。
案内用パンフレットに乱舞する「お客様本位」の文字
最初にちょっとした雑談ベースで私の投資経験を尋ねてきた。
仮名田氏:愚者小路様は運用のご経験はございますか?
愚者小路:いやー、全然ですねー。
全然どうなのか語らないのが私のうまいところだ(自画自賛)。
「全然経験ないです」なのか「全然余裕っス」なのかは仮名田氏の解釈に委ねることにした。
ビックリするほどクドい「お客様本位」宣言
最初に開かれた冊子には、あやふや銀行が顧客に対しどういった提案やサービス提供をしていくかといった内容がまとめられていた。
立場上、これらを宣言しないと始まらないのだろう。
概要を述べると、いわゆるフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)対応だ。
- お客様本位の運用を提案します
- 商品ラインナップもお客様本位のものを揃えます
- アフターサービスの充実もお客様本位に行います
- お客様本位のコンサルティングができるよう、担当者個人にノルマは課していません
特定を避けるためパンフの文面を少しボカして書いた。
箇条書きの最後、担当者個人にノルマは課さないという書き方には相当センスを感じた。
この文章を読んであなたはどう思っただろうか?
A:あやふや銀行はノルマを課さないのか。なんて良心的なんだろう。
それなら安心して付き合えるな。
B:個人にノルマは課さなくても店舗にノルマが課せられていたらどうなる?
販売員一人頭いくらっていう「間接ノルマ」にならないか?
私は圧倒的にB寄りの考えだが、あなたはいかがだろうか。
冊子はA3に両面印刷して二つ折りにした4ページ構成。
そのわずか4ページの間に「お客様本位」が11か所あった(愚者小路調べ)。
お客様本位とは言うが、この量はむしろ金融庁に向けたアピールなんじゃないの・・・?
結局のところ本当に「お客様本位」かどうかはこの後の相談/提案内容次第だ。
話を聞いた後で「お客様本位」だったかどうかを私が「お客様本位」に決めれば済む話である。
そんなことを考えながら、仮名田氏の説明には特に口を挟まなかった。
資産運用の導入テキストは素直に高評価
「お客様本位」に関する宣言が終わると、仮名田氏は投資信託の概論を解説し始めた。
長いので箇条書きで要約する。
- 投資信託は長期で運用する前提の商品のため、1か月ぐらいでリターンを求めるものではない。
- 5年10年と保有することを見越してアフターフォローの体制も整っている。
- コンサルティングも随時受け付けているし、場合によってはグループ会社の担当を紹介することもできる。
愚者小路:グループ会社を利用する場合はそれぞれ別個に口座を開設しないといけないのですか?
仮名田氏:
そうですね。
個別に開設という形にはなってしまいますが、どういった商品を購入されているかという情報はご了承いただいたうえでグループ内で共有させていただきます。
投資を始める前、もしくは始めた直後ではなかなかイメージが湧かないかもしれないが、あちこちに口座が散らばると全体像の把握は思いのほか難しくなる。
ファンド取扱数の少ない金融機関の口座を複数持つぐらいなら、多くの商品を取り扱っているネット証券一本で済ませる方がよっぽどスマートなのではないだろうか。
次に仮名田氏が差し出したのは40ページ弱のやや厚めの冊子。
パンフレットというよりちょっとした読本といったボリュームだ。
物価の上昇と購買力の減少の関係とか
昨今の預金金利の低さとか
少子高齢化社会の影響で社会保障や税金などの支出が増えるとか
色んなアセットクラスが存在するとか
分散投資とリスクの関係とか・・・
既に投資を始めてる人にとっては「あぁ、例の話ね」ぐらいのスタンダードな内容だった。
読み飛ばした部分もだいぶあったが、どのページも数字と図解を効果的に使った非常に分かりやすいレイアウトで正直感心した。
私の見立てでは金融教育にそのまま使えるクオリティだ。
お見せできないのがたいへん残念である。
ファンドの回転売買についてはどういうスタンスなのか
ここまでの説明を踏まえて、あやふや銀行の想定する投資スタンスについて確認してみた。
愚者小路:あやふや銀行さんの想定する「中長期の分散投資」とは何年ぐらいを指すのでしょうか。
仮名田氏:中期が5年ぐらい、長期が10年ぐらいと想定しております。
愚者小路:
その間一つのファンドを持ち続ける想定でしょうか。
それとも「この時はAファンド、その次はBファンド」とあちこち乗り換えるものなんでしょうか?
仮名田氏:
そういった考えはないですね。
あくまでお客様によっては乗り換えを希望される場合もございますので、その場合はご提案させていただきます。
一つのファンドで資産を分散していけるものがございますので、基本的にその商品をお持ちいただいたら中長期で保有を続けていただきたいです。
回転売買は推奨していないようだ。
たしかに資産分散が十分になされたポートフォリオなら10年でも20年でも持続可能なのだから。
銀行って来店しないと取引できないの?
積立投資の説明に入ったところで、どうも来店を前提としているような口ぶりがあり、私は少し気になった。
仮名田氏:積立投資でしたらお忙しくてなかなかご来店いただけない場合も投資を続けることができるのではないかなぁと思います。
忙しくてなかなか来店できない場合、売買だけでなく積立の停止や積立額の変更もできないのだろうか?
そもそも銀行の営業時間(平日昼間)に来店するなんて大半のビジネスパーソンにとって現実的ではないだろう。
愚者小路:投資信託の売買は来店しないと行えないものなのでしょうか?
仮名田氏:
ネットバンキングを設定していただけばできるようになっております。
ただし一部商品はまだネット対応していないため、全体の95%ぐらいは可能です。
愚者小路:その一部っていうのは具体的に何ですか?
仮名田氏:
つみたてNISAという商品はネット非対応です。
つみたてNISAは毎月の引き落としでの取引ですので、一括で40万円のお買付などはできません。
2018年から始まった新しい制度なのでまだインターネットバンキングには対応していない状況でございます。
もう2019年も終わろうとしているのに、2018年開始のつみたてNISAが未だにネット対応できていないとは・・・ずいぶんのんびり屋さんである。
あやふや銀行がつみたてNISAにどの程度力を入れているか、どの程度の優先度か、察するまでもないように思う。
銀行はわかりやすいファンドの取扱い数が多い(担当者談)
仮名田氏:
銀行の方で扱わせていただいてる投資信託というのはかなり数がございます。
ファンドラインナップのご案内資料として一部抜粋して最新のものや人気のものをまとめさせていただいております。
愚者小路:かなり数が多いというのはだいたい何種類ぐらいあるものなのですか?ざっくりで結構です。
仮名田氏:一覧があるのでお持ちいたしますね。
仮名田氏が奥に資料を取りに行ってしまった。
手元の資料には記載がなかったようだ。
戻ってきた仮名田氏が手渡してもらったのは全商品の一覧。
どのアセットクラスのファンドが何種類といった感じでまとめられていた。
全体数は細かく集計しないと分からないが、100以上200未満といったところだ。
100以上200未満と聞いてピンと来ない人もいるかも知れない。
だいたい有店舗の証券会社と比べれば若干少なく、ネット証券と比べれば格段に少なく、銀行業界で比べれば多い方だ。
では全商品一覧からファンドラインナップの案内資料へ、どういう意図で「一部抜粋」したのだろうか。
抜粋の過程に作為が介在する余地は十分にある。
あやふや銀行側の売りたい商品だけを抜粋して、作為的に選択肢を狭めさせている可能性を完全に拭い去ることは難しい。
愚者小路:
パッと見、たくさんあるなぁというのは分かりました。
これってラインナップとして多い方なのですか、少ない方なのですか?
仮名田氏:
証券会社さんの方がより多い取り扱いがございますね。
銀行で比べれば他と比べて同じぐらいかなぁという印象です。
証券会社さんだとテーマ性のある商品も多いですので取扱数も多いですね。
テーマ性のあるトガったファンドをご希望でしたら系列の証券会社をご紹介させていただくこともできます。
対して銀行は分かりやすい商品が多いイメージですね。
愚者小路:
手厳しい質問になっちゃったら申し訳ないです。
「大は小を兼ねる」的な安易な発想なのかも知れないですけど、商品数豊富な証券会社の方が色々なファンドを探しやすいかもと思ってしまいました。
その中で証券会社ではなく銀行で投資信託を取引した方が良い理由/メリットって何でしょうか?
一瞬の沈黙。
まばたきの増えた仮名田氏。
しまった、オロオロさせてしまったと思うも後の祭り。
思考を巡らせて回答が思いついたようで、「整いました」とばかりに口を開いた。
仮名田氏:
銀行は既に口座をお持ちなので、これ以上口座を増やさずに済むというメリットはございますね。
あと安定的な運用の見込める分散商品というのも銀行での取り扱いが多いです。
また証券会社さんに対して「営業がグイグイ来るんじゃないか」というネガティブイメージをお持ちのお客様もいらっしゃいますので、銀行でカタいものや安定的なものを紹介してほしいというニーズはありますね。
運用そのものとは外れてしまうのですが、銀行では保険の取扱いもございます。
ライフプラン全体を見たご提案ができるというのも銀行の強みですね。
たしかに、取扱商品一覧を見たら一通りの保険商品があった。
一通りということはもちろん悪評高き外貨建て保険も名を連ねている。
ライフプラン全体を見た提案か。
右も左も分からない運用初心者が投資商品から保険商品まで高コストでがっつり囲い込まれてしまう様子が容易にイメージできて、少し震えた。
ちなみに上記の「銀行の投資信託は安定的・分かりやすい・カタい」というアピールポイントは記憶の片隅に置いといていただきたい。
勧めてくる商品がどの程度安定的で分かりやすくカタいのかは後編で明らかとなる。
【次回予告】さーて、次回の愚者小路さんは
愚者小路です。
冊子がよくまとまっていて高評価だったあやふや銀行。
本当に分かりやすくて長期保有に適したファンドを勧めてくれるかな?
ありがとうございます。
次回もまた見てくださいね。
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