【総括】金融機関における資産運用の相談は本当に「相談」になっていたか?

【総括】金融機関における資産運用の相談は本当に「相談」になっていたか? 【連載】愚者小路、渦中の現場から。
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愚者小路
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証券会社と銀行に来店予約を入れ、どういう提案がいただけるかを体験レポートとしてお伝えしました。


最後に両者の抱える問題点を総括して、このシリーズは完結とします。

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金融機関店頭の相談と提案内容を総合評価しよう

せっかくなので食べログやamazonライクにレビューをまとめておこう。

証券会社の評価

 相談とは名ばかりの一方的なセールスだった

こちらの事情や意向を一切聞かず、販売員が一方的に喋り続けるのみ。
投資信託のコストについての説明もところどころに嘘があり、「私を騙そうとしているのでは」と警戒せざるを得なかった。

しきりに「これから1年は米国株が上がる」と自信満々に語っていたが、個人的主張を顧客に押し付けてくることに若干の抵抗を覚えたのは事実だ。
その通りになったら販売員の手柄、その通りにならなかったら自己責任というアンフェアな構図でおいそれと提案に従う気になれない。

勧められたファンドは1種類のみで、ポジティブな面ばかりを強調するがコストについてはこちらから質問しなければ教えてもくれなかった。
さらに、リスクについての説明が全くなかったのも不誠実に感じた。

プラス評価できる要素に乏しかったため、星ひとつとした。

銀行の評価

 分かりやすい資料が活きない提案内容

その銀行の販売額ランキングを元に上位のファンドを勧めてきた。
それが私に向いているファンドなのかという考慮は一切ないように思えた。

ラインナップは全体的に高コストで、一般的に信託報酬が安いとされるインデックスファンドすら、ネット証券の水準と比べると話にならないぐらい高い。
つみたてNISAのラインナップだけ低コストに抑えられていたが、それらを見た後に一般ラインナップの商品はとても買う気になれない。

AIを投資判断に用いているヘッジファンドやハイイールド債券ファンドなども勧められたが、どちらも初心者が訳も分からず購入できる商品ではないように思えた。
顧客本位を前面にアピールしていた割に、いざファンドの紹介となると顧客を置き去りにしているような印象も否めなかった。

悪い点ばかりではなく、いただいた資料は図と数字データを使って大変分かりやすい仕上がりとなっていたのが好評価だったので星2つとした。

購入時手数料という命綱を手放せない金融機関

証券会社も銀行も共通して、購入時手数料の説明に苦労していたように思えた。
購入時手数料に対する両者のロジックを振り返ってみよう。

証券会社では主に「説明やアドバイスの対価」として主張していた。

  • 購入時手数料を取ることで顧客にファンドの内容をきちんと説明し、売買タイミングもアドバイスする。
  • 購入時手数料のかかるファンドの方が大きなリターンを期待できるのだから、多少コストがかかっても元は取れるだろう。

ではノーロードの商品を選んだ場合は何の説明もしてくれないのだろうか。
購入時手数料のかかるファンドも説明とアドバイスを拒否すれば購入時手数料無料として処理してくれるのだろうか。
ノーロードの商品について説明や売買タイミングのアドバイスを求めた場合、別途購入時手数料を徴収するのだろうか。
さらに言えば、購入時手数料が顧客のパフォーマンスに寄与していないからこそ、対面証券の共通KPIは「最下位集団」とも呼べる成績なのではないか。

どうにもロジックの弱さを感じてしまう。

銀行では主に「商品性によって発生せざるを得ないコスト」と主張していた。

  • 商品性が複雑なファンドは購入時手数料が高くなるもの
  • 新興国など馴染みのない地域を対象とするファンドは購入時手数料が高くなるもの
  • だから購入時手数料が発生するのは必然

商品性の複雑さによって変わるべきコストは信託報酬(運用管理費用)ではないだろうか。
商品性や投資地域によって購入時手数料が決まるなら、ネット証券でも同じようにかかっていないとおかしくないだろうか。

同じく、この理屈には違和感を禁じ得ない。

ネット証券各社が投資信託の購入時手数料を撤廃してもなお有店舗の金融機関が購入時手数料を取っていかざるを得ない理由はただ一つ。

店舗の取り分が必要だから

たったこれだけのきわめてシンプルな理由であり、「説明」「アドバイス」「商品性」といった理屈は単なる「おためごかし」に過ぎない。

資産運用という長い旅路の中でコストは一種の重荷である。
可能な限り軽い方がより速く、より遠くへ行ける。
それを理解しているベテランほど、余計な重荷(コスト)は背負わなくなる。

投資信託とはコストとリスクを背負って遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。
愚者小路家家訓、一緒にご唱和ください の図

少なくとも金融機関店頭に相談に行こうと考えるような初心者ほど、本来的には店舗や販売員の取り分といった「重荷」をぶら下げる余裕などないはずだ。
だが荷物の取捨選択ができないことに付け込まれ、余計な重荷を背負わされるケースが後を絶たない。

有店舗の金融機関が購入時手数料を欲しがる背景もよく分かる。
しかし、殿様商売的にいつまでも購入時手数料に依存したビジネスが続くかは大いに疑問がある。

投資に関する情報は日々増加の一途をたどっていて、ちょっと検索すればいくらでも出てくる。
もちろんネットの情報だから取捨選択や判断は必要になるだろうが、金融機関が店頭で説明する偏った情報よりはいくらか中立性が確保されているはずだ。
同じように書籍やセミナーだって増えている。必要十分な知識を得るには事欠かない時代なのだ。

顧客も徐々に金融機関が望まぬ知識を身に付けつつあるのだ。
無知な顧客を無知なまま囲い込み、今後も無知なままでいてほしい、なんて願いが通じなくなるのも時間の問題だろう。

顧客の金融リテラシー向上に伴い、これからも購入時手数料という命綱は日に日に細くなっていくだろう。
店舗がぶら下がれないほど細くなってしまう前に、購入時手数料に代わる次の一手を見出すことができるだろうか。

資産運用の相談として成立していない原因は「アレ」がないから

ここまでお読みいただいた方は既にお気付きかも知れない。
証券会社と銀行、どちらにも欠けていたものは「ヒアリング」に他ならない。

店頭で販売員と相対してからそのほとんどが販売員のターンだった。
私が意図的に口を挟まなかったら終始無言で終わることすらできたはずだ。

資産運用とは個人の意向に一切踏み込まず紋切型の答えを押し付けられるほど唯一解の望めるものではない。

  • 顧客がどれだけリスクを負う腹積もりなのか?
  • その腹積もりが現実的なものか?そうでないとしたらどの辺に現実的な線引きができるか?
  • 顧客がどういう資産形成をしていこうと考えているのか?

そこまでクリアになって初めてマトモな提案ができるのではないだろうか。
もし私が知り合いから資産運用の相談を持ち掛けられたら、そこまでやるだろう。
(周りに投資をしていることを伏せているため実際には起こり得ないが)

いきなり「株式ファンド〇%と債券ファンド〇%でポートフォリオ組んでね。全部インデックスファンドで統一して商品はそれぞれコレとコレで・・・」などとは口が裂けても言えない。

ヒアリングなき提案は「相談」ではなく「演説」に近い。

百歩譲って口座開設して「お付き合い」が開始すればある程度のヒアリングには応じてくれるかも知れない。
ただし販売員らの仕事はファンドを売ることなので、多少ヒアリングしたところで「それはそれとして」とばかりにヒアリング度外視の提案をしてくる可能性の方が高く思えるのは私だけだろうか。

資産運用の相談相手を探すコツ

既にレポートした通り、金融機関の店頭に赴いても「相談」することは叶わない。

それでも誰かしらに相談することで自分の投資方針を定めるサポートをしてほしいというニーズは一定数あるはずだ。
では金融機関で相談が成り立たないなら誰に相談すれば良いのだろうか。

世の中には資産形成のコンサルティングを行っているアドバイザーが少なからず存在する。
アドバイザーには中立的な立ち位置が求められるため、金融機関付きのアドバイザーは除外しよう。

では独立系のアドバイザーならOKかというと、問題は残る。
独立系アドバイザーにも特定の商品を売ることで一定の見返りを得ている人もいるのだ。
(ブログ界で例えるとアフィリエイターに近い人だと認識している)

たとえば「相談無料」をうたうアドバイザーはどうやって利益を得ているのだろうか?
まさか慈善事業というわけではないだろう。

そういう人はアドバイザーよりも「売り手」の色合いが強くなる以上、提案にも何かしらの意図が入り込む可能性が否めない。
アドバイザーの利益の源泉を考え、少しでも売り手要素を感じるなら相談相手の選択肢から外していきたい。

「売り手」「相談者」を完全に分離することがアドバイザー探しのコツではないだろうか。

資産運用するにあたり相談は必須ではない

資産運用に必要な知識は自分で時間をかけて学ぶこともできる。
実際私もそのクチだ。

何だか逆説的に感じるかも知れないが、人に相談するのにも最低限の知識が必要となる。
現に証券会社編銀行編で担当者の言うことに対し私が疑問を持つことができたのは最低限の知識があったからに他ならない。

自分で知識を得るのは面倒だから誰かに何とかしてもらおうという意識では強欲な「売り手」にたちまち捕食されてしまうだろう。
強欲な「売り手」とは金融機関ばかりではない。投資詐欺を目論む人や情報商材を売りつけようという人もそれにあたる。

投資というのは長い長い旅路である。
その序盤ぐらいは学びに時間をかけても良いし、少額積み立てなど小さく初めつつ並行して学んでいっても良いのではないだろうか。

さいごに:声を大にして伝えたいシンプルなメッセージ

ご唱和ください

金融機関は個人投資家をあなどってはいけない。
それ以前に金融機関に侮られるような個人投資家になってはいけない。
ましてや「初心者だから」は侮られていい理由にはならない。

~愚者小路~

全6回にわたり金融機関の店頭で行われている提案の実態を紹介した。
金融機関の店舗関係者には都合の悪い記事に仕上がったが、これから投資のスタートを切ろうとしている人のためになる事を最優先としているため私としては結果オーライだ。

もし金融機関の店舗関係者が見ていたら、今後はいっそう気を引き締めていただければと思う。

愚者小路
愚者小路

明日そこの店舗に訪れる一見「チョロそうな顧客」も実は私かも知れないのだから・・・

※当連載のまとめ記事はこちら
【連載記事一覧】愚者小路、渦中の現場から。

【次回予告】さーて、次回の愚者小路さんは

愚者小路
愚者小路

愚者小路です。


お気に入りの投資本が発売から1年経ちました。
長期投資に関する本なので長期で売れてくれていればいいのですが、状況がどうなっているのか確認してみましょう。

ありがとうございます。

次回もまた見てくださいね。

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