投資信託ビギナーの方向けの連載記事 第24回です。
連載を通して「右も左も分からない投資信託初心者が自分で投資信託を選び、ポートフォリオ運用を続けられるようになる」ことをゴールとしてナビゲートさせていただきます。
今回はわりとフランクに使われるわりにイマイチ実体が掴めないワード「リスク許容度」について。
そのままで理解するのは難しいので、少し分解して考えてみましょう。
「リスク許容度なんて言われても分かんないよ!」はごもっとも
どれぐらいリスクを取れるか、リスク許容度をしっかり決めておきましょう。
教科書的によく言われますね。
とは言え投資をした事もない、あっても経験の浅い初心者にはなかなか理解しにくいのではないでしょうか。
カレー屋のココイチ行った事もない人に何辛まで大丈夫か聞くようなものです。
※ココイチは0~10辛で辛さの調整が可能
リスク許容度と言われても何の物差しも持っていない。
求めるための公式があるでもない。
分からなくって当然です。
そんな実態の掴みにくいリスク許容度も2つの概念に分解するとずいぶん理解しやすくなります。
- 心理的リスク許容度
- 経済的リスク許容度
それぞれどういうものなのか、分かりやすく解説していきます。
価格変動の振り幅に耐える「心理的リスク許容度」
投資初心者が最初に理解すべきがこの心理的リスク許容度です。
価格変動リスクによって資産価格が上下すると思った以上に心が揺さぶられるものです。
特に投資始めたばかりで含み損(元本割れ)が起きた場合の不安は相当なものでしょう。
その時に心理的リスク許容度の範囲内に収まっていればじっと耐えられますが、心理的リスク許容度を超えてしまっていたらその先にあるのはパニック売りです。
心理的リスク許容度が小さすぎると、長期投資に支障をきたします。
長期投資と意気込んで始めたのにちょっと上がると慌てて利確、ちょっと下がると慌てて損切りと気付けば短期売買的な投資行動を取ってしまいがちです。
下がると急に「いったん売って、下がり切ったら買い直そう」と頭フル回転で逃げプランを策定し始めるのも大きな特徴ですね。
価格変動を受け入れられていないために逃避ファーストとも言うべき投資判断をしてしまうわけです。
心理的リスク許容度が十分にないとそもそも長期投資が成り立たないんだよ。
心理的リスク許容度は投資経験と共に徐々に大きくなっていく傾向があります。
下落のたびにあなた自身の心が鍛えられる、と表現すれば分かりやすいでしょうか。
下落で含み損や含み益減少を目にして初めて「リスクの現実」と向き合えます。
もちろん株価は上がり過ぎて下がり過ぎるという当たり前は教科書的に見知っているでしょうが、教科書的な知見と実体験の間には歴然とした差があります。
特にゴキゲンな上昇相場で投資を始めた人にとっては最初の下落こそが心理的リスク許容度を獲得するチャンスです。
そこでパニック売り起こしてしまうと心理的リスク許容度は育っていかず「ずっと右肩上がりでないと我慢できない投資家」になってしまいます。
逆に考えれば価格変動の免疫としての心理的リスク許容度を獲得するまではあまりメチャクチャなリスクを取るべきでないとも言えます。
リスクの小さいファンドを選ぶとか、投資金額を少なく絞って額面としての変動幅を小さくするとか工夫して、心理的に十分リスクを受け入れられるようになってから投資に本腰を入れるのも良いでしょう。
下落の原因や程度、その時の空気感を体験すれば次の下落はもっと冷静でいられるはずです。
そうやって心理的リスク許容度は少しずつ育っていくのです。
最終的には○○ショックと呼ばれるような暴落が起きても「のほほーん」としていられるよ
。
下落なんて5年で見慣れて、10年で見飽きるものなんだよね。
ただ性格的にどうしても心理的リスク許容度が育っていかない場合は、投資以外のジャンルで資産形成を目指すなど路線変更を検討しましょう。
投資は著しい精神的苦痛を伴ってまでやるものではありません。
溶かしちゃいけないお金はしっかり守る「経済的リスク許容度」
こちらは個人のマネープランにもつながる、かなり突っ込んだ解釈が必要です。
人には誰しも「このお金まで失ってしまうと人生設計が大きく揺らぐ」という領域があります。
その領域まで損失が侵食しないためにはどの程度のリスクに収めないといけないか、これが経済的リスク許容度です。
要は価格変動の幅をライフマネーにおける「余裕色」の濃い領域で完結するように心がけようとするものです。
よくある「投資は余裕資金で」「生活防衛資金を確保してから投資を始めましょう」はこの経済的リスク許容度をふまえた先人の知恵です。
具体例を挙げてみましょう。
株式市場の大暴落を受けてあなたのリスク性金融資産が4割減になってしまったとします。
たしかにダメージはありますし、心理的にもこたえるかと思います。
しかしもしこの資金が「最低限のマネープラン」外のお金であれば人生における致命傷にはなり得ません。
極端な話、リスク性資産がゼロになっても「最低限のマネープラン」に必要なお金は確保されているのですから。
少し生活水準を落とすなり切り詰める事でその損失を吸収できるのであればノーダメージではないにせよ致命傷には至らない、というわけです。
ではどういう時に経済的リスク許容度を度外視してしまいがちか?
答えはギャンブル的かつ感情的になった場面です。
投資はギャンブルではありませんが、投資をギャンブルにしてしまう人も少なくありません。
損失を取り返すためにより大きなリスクを取りに行ってしまい、気付けば取返しのつかない損失を出してしまったというパターンは投資失敗談の王道です。
※この行動は「ブレークイーブン効果」と呼ばれます。
あなたにとって溶かしちゃいけないお金のラインはどの辺りでしょうか。
一度考えてみる事が経済的リスク許容度を理解する第一歩につながるかも知れません。
両者の釣り合いが取れていないと滑稽な投資行動になりがち
心理的/経済的リスク許容度は小さいよりは大きい方が良いでしょう。
では両者の大きさがバラバラの場合はどうするか?
その時は小さい方を基準点としましょう。
心理的リスク許容度:小で経済的リスク許容度:大ならたとえ経済的にはリスクを負えたとしても、心理的負担の少ない商品や金額を考慮しなければなりません。
逆に大きい方に合わせると、ひどくバランスの欠いた投資行動を取りやすくなってしまいます。
心理的リスク許容度:小、経済的リスク許容度:大で経済的リスク許容度を「基準点」にした場合
今まで貯金一辺倒でけっこうな財産を築いた人(うん、これ自体はたいへんご立派)。
年収が多いのか貯蓄習慣のある人か退職金か何かでまとまったお金を手にしたか、何にせようらやましい限り。
でもそんな人が投資に手を出し始めた時はこのパターンになりがち。
ちょっとやそっと減ったぐらいじゃライフプランが揺るぎやしない盤石な資産を持っていながら、数%の含み損が出ただけでこの世の終わりのような大騒ぎ。
些細な調整局面にも「暴落が来ました!どうしたらいいですか?」なんて。
Yahoo知恵袋見てるとこのタイプ、けっこういます。
対面系金融機関の顧客にはもっと多いんだろうなと思うと、金融機関の従業員には少しだけ同情します。(自ら撒いた種なので同情するにしても少しだけね!)
時と共に「リスクの現実」を受け入れて心理的リスク許容度は次第に大きくなっていくでしょうが、どうしても感覚をアップデートできなかったら無理に投資を続けない方が良いでしょう。
投資は人生の必修科目ではないので、資産形成は他の手段で考えれば済む話です。
心理的リスク許容度:大、経済的リスク許容度:小で心理的リスク許容度を「基準点」とした場合
溶かしちゃいけないお金をあっさり溶かしてしまいがちな人がこのケースに該当します。
リスクテイカーというより、リスクジャンキーと表現した方が適切でしょう。
このタイプは心理的リスク許容度が大きいため心理的ブレーキがかからず、ライフプランが揺らぐ領域まであっさり損失を侵食させてしまいます。
原因はこんなところでしょう。
- 危機意識が欠落している
- マネープランを微塵も考えていない
- 「アタリ」を引く気持ちよさに脳が灼かれている
(パチンコ中毒の人がアタリを引くまで際限なくお金を入れられるのと同じ)
経済的余裕の少ない中でその余裕に見合わないリスクテイクをしているのだからゲームオーバーは相当濃厚と言わざるを得ません。
認識をアップデートできないなら投資(その人にとってはほぼギャンブル)からは距離を置いた方が良いでしょう。
投資が身を滅ぼす毒となっては元も子もありません。
心理的リスク許容度と経済的リスク許容度を小さい方に揃えられた場合
釣り合ってる分には特段問題ありません。
心理的リスク許容度:小、経済的リスク許容度:小なら心理的にブレーキがかかり、ライフプランが揺らぐほどの損失が出る前に逃避行動を取るからです。
心理的リスク許容度:大、経済的リスク許容度:大なら経済的な余力領域が潤沢なので大きな損失が出てもライフプランはそうそう揺るがないからです。
(多少の生活見直しは必要になるかも知れませんが)
心理的リスク許容度:小、経済的リスク許容度:小の人の心理的リスク許容度が次第に大きくなっていく可能性はありますが心理的リスク許容度を決して野放しにせず、経済的リスク許容度を超えさせない節度ある運用を心がけたいものです。
心理的リスク許容度いっぱいギリギリまでリスクを取らなきゃいけないものではないですから、経済的リスク許容度に応じたリスクを維持できれば問題ないでしょう。
まとめ
心理的リスク許容度と経済的リスク許容度について解説しました。
ぜひ両者の大小を考えてみてください。
そのバランスを取りそこなうと、あなたがどういう行動を取ってしまいがちかをイメージできれば今後の投資ライフにおけるリスクマネジメントの一助になるのではないでしょうか。
心理的リスク許容度は下落の経験により鍛えられます。
経済的リスク許容度は年収アップや副業、節約などの手段で拡張可能です。
どちらも常に移り変わるものなので、だいたいでもイメージできるようになっておきたいものです。
以上、リスク許容度についての解説でした。
【次回予告】さーて、次回の愚者小路さんは
愚者小路です。
ポートフォリオ運用においてよく陥りがちな罠があります。
何でもかんでも取り入れすぎて全体像が評価不能になってしまう「あの症状」とは。
次回は「【Yahoo知恵袋より】重複だらけで評価不能!寄せ集めポートフォリオの混沌」です。
ありがとうございます。
次回もまた見てくださいね。
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