投資信託ビギナーの方向けの連載記事 第15回です。
連載を通して「右も左も分からない投資信託初心者が自分で投資信託を選び、ポートフォリオ運用を続けられるようになる」ことをゴールとしてナビゲートさせていただきます。
今回は情報過多の処方箋として、ネットに溢れる投資情報の真偽を自分で切り分けられるようになる方法について。
投資情報に限った話ではありませんが嘘を嘘と見抜ける人でないと投資をするのは難しいのです。
投資を始めるにあたり、ある程度は自力で情報収集して勉強を重ねた方がいい。
これは「真」か「偽」で言うと圧倒的「真」です。
別に学術的なレベルまで知識高めろって話じゃないですよ。
実用的なレベルまでなら決して無理難題ではないはず。
一切勉強せずに商品選択から投資方法まであらゆる投資判断を他人に丸投げしたらどうなるでしょう。
紹介者の儲けにつながるようなこってりコストマシマシな商品を掴まされるかも知れません。
よしんばそういう悪辣な商品を掴まされなかった場合でも「この人の言う事は本当に合っているんだろうか」という不安からは抜けられません。
不安に思ってインターネットで相談してみようにも、これまた回答者の言う事が正しいかどうか分からない。
そんな分からないループに陥る事もしばし。
ありがたくも大概の情報はネットで調べがつく世の中。
反面、その中には首を傾げるトンデモ情報だって少なくありません。
今回は投資情報の真偽を判別するためにきわめて有用な質問を一つ紹介しましょう。
考え方さえ身に付けばたった今から使えます!
「それが本当だったらどうなっていないといけない?」と問うてみよう
はい、いきなり答え。
表題のワードがその有用な質問です。
もし見聞きした情報が本当だったらどうなっていないとおかしいか、想像力と洞察力をはたらかせてみましょう。
あまり力を入れすぎず、ちょっとした「楽しい思考実験」「想像遊び」ぐらいの感覚でのびのび考えます。
見聞きした情報が偽(ガセ)だった場合、「それが本当だったら」の先にある世界と現実が食い違うはずです。
概要だけではなかなか分かりにくいと思うので私がネット上でちょいちょい見かける情報を例に考えてみます。
例題1:ファンドの信託報酬と期待リターンに関するガセ
対面販売系の金融機関が使いがちな表現です。
こんなロジックでも組まないと店舗の取り分がたっぷり乗った高いコストのファンドを誰も買ってくれませんから。
ある程度リテラシーがあれば即答できるけれど、知らない体でゼロベースから考えてみましょう。
「お題の情報が本当だった世界」を考える
信託報酬の高さと期待リターンの高さが直結する世界では、熾烈なコストアップ競争が行われているはずです。
運用をより大仰にして人や会社を多くぶら下げる事がハイリターンにつながる世界なのだから。
「信託報酬5%を実現!ラグジュアリーな運用をあなたに」みたいなホラーな(その世界では真っ当な)宣伝文句が横行するでしょう。
高い信託報酬を実現するためにどれだけ営業努力したかをファンドマネージャーが嬉々として語る記事がマネー誌に載るはずです。
さらにコストを上乗せするために、高コストファンドをファンズオブファンズ形式で取りまとめたファンドが乱発します。
さらにさらに、そのファンズオブファンズ形式のファンドを取りまとめたファンズオブファンズオブファンズ形式を実現すればもっと高いリターンが期待できるはず。
・・・ほぼ無限大にコストとリターンを高める事が出来てしまいますね。
現実はもちろん、こんなクレイジーな世界にはなっていません。
「お題の情報が本当だった世界」と現実が食い違っているのでこの情報は偽(ガセ)と判断できるわけです。
ちなみに現実では低コストインデックスファンドが注目されてシェアをグイグイ上げています。
信託報酬と平均リターンの関係を集計すると、決して比例関係になっていない事が分かります。
例題2:初心者向けの運用方法とベテラン向けの運用方法に関するガセ
アクティブ志向は大なり小なりいるでしょうし、これからもいなくなる事はないでしょう。
アクティブ運用をしたい人はベテランか初心者に関係なくやればいいだけの話です。
こちらのお題もゼロベースから考えてみましょう。
「お題の情報が本当だった世界」を考える
インデックス運用が初心者にしか選ばれない世界では、私のように投資経験十数年でインデックス投資をしている人がいなくなります。
よしんばいたとしても、わざわざブログを使ってまでインデックス運用している事を公言するような人はいないはず。
十数年投資やってて未だに初心者向けの道具を使ってるとしたらそれは「恥ずかしい事」だろうから。
その世界ではインデックス運用は「補助輪つきの自転車」のような扱いになるだろうね。
百歩譲って個人ならまだいいでしょう。
186兆円もの年金マネーを運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では2020年時点で8割方インデックス運用を採用しています。
世界最大の年金運用機関がインデックス運用なんて初心者向けの運用方法を採用していたら世間からの袋叩きは不可避でしょう。
「国民の大事な金をそんな初心者じみたマネで運用してるのか!?」なんてね。
結果としてGPIFの運用はアクティブ100%になっていくはずです。
現実はもちろん、こんなクレイジーな世界にはなっていません。
「お題の情報が本当だった世界」と現実が食い違っているのでこの情報は偽(ガセ)と判断できるわけです。
ちなみに現実では運用方法と初心者かベテランかの区切りは一切関係ありません。
- インデックス運用は合理的な分散投資を行うための手段
- アクティブ運用は自らの裁量で立ち回り「インデックス超えの名誉」か「インデックス劣後の屈辱」を得るための手段
(どちらが得られるかは運用前には分からないし、確率は五分五分ではないので気を付けましょう)
ただコレだけの話です。
さいごに:相場予想など未来に関する真偽は考えない
情報を見聞きした時「それが本当だったら」をシミュレートする方法は、「それが本当だった世界」と現実とを比較します。
よって現実との比較ができない未来の話にこの方法は使えません。
では未来に関する投資情報はどう真偽を判断すればいいのか?
答えは簡単。
未来は不確実なので真偽なんてありません。
「真」でもなけりゃ「偽」でもない。
それが何かと聞かれたら・・・
「虚」です。
そもそも判断する価値があるのか、自問自答してみましょう。
以上、投資情報の真偽を暴く方法でした。
【次回予告】さーて、次回の愚者小路さんは
愚者小路です。
カンさんの投資信託クリニックではマネー問診票「あなたとお金の親密度を測る55の質問」を公開されています。
相談者さんとこの結果を基にカウンセリングをなさるそうですが、いざ自分で答えてみると意外な使い道に気付きました。
ありがとうございます。
次回もまた見てくださいね。
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