投資信託ビギナーの方向けの連載記事 第19回です。
連載を通して「右も左も分からない投資信託初心者が自分で投資信託を選び、ポートフォリオ運用を続けられるようになる」ことをゴールとしてナビゲートさせていただきます。
今回は投資信託の目論見書の読み方。
目論見書は食わず嫌いの人が多い印象ですが、全ファンドで構成がほぼ統一されているので実はけっこうカンタン。
一度覚えれば全ファンドの目論見書をサクサク読めるようになりますよ。
ファンドの中身が分からないまま安易に購入してしまう根本原因
商品性を理解しないまま金融商品を購入してはいけません!
・・・なんて百万遍言われてる言葉ですね。
特に投資信託は他商品と比べれば格段に透明性が高いので理解はそれほど難しくないはずです。
にもかかわらず中身が分からないままファンドを「ジャケ買い」してしまうケースが後を絶たない理由は主に次の2つでしょう。
理由1.店頭の金融機関の商品説明を受けて理解した気になってしまう
物分かりのいい人は1を聞いて10を知るなんて言いますが、右も左も分からない人が店頭の金融機関でセールストークを受けてもまず処理が追いつきません。
10を聞いて1を知るのがやっとでしょう。
特に対面証券や銀行の販売員はコストやリスクについては申し訳程度にしか語りません。
逆にその商品がどれだけ今のトレンドに即しているか、どれだけ注目されているかといったキラキラ部分は猛烈に語ります。
流れるようなセールストークを聞いた後に「ごめん、途中から全然分かんなかった」と言える人はごく一部でしょう。
結果としてファンドの中身をふわっとしか理解しないまま安易に購入してしまうわけです。
理由2.目論見書を読むのがめんどくさい
理由1のように販売員の説明を聞き流してしまった人でも購入前にきちんと目論見書を読めさえすれば、ファンドをきちんと理解してから購入できます。
同じく販売員のいないネット証券でも、自分で目論見書を読むのは投資家としては当然の姿勢です。
目論見書という響きのカタさから、大なり小なり拒絶反応が出てしまう気持ちは分かります。
しかし投資信託とは大事なお金を文字通り「信じて託す」わけですから、中身が分からない事には信じるも何もありません。
断言します。
結局のところ目論見書の中身をきっちり押さえれば「ファンドの中身が分からない問題」はあっさり解決します。
そして目論見書の中身をきっちり押さえるのにかかる時間は3分もあれば余裕です。
ブログのネタ集めや純粋な好奇心で100や200じゃきかないぐらい目論見書を読みまくってきたわたくし愚者小路が、目論見書を速攻で読み解く方法を解説します。
冒頭に述べた通り目論見書の構成はほぼ統一されているため、ここで覚えたスキルはどんなファンドにも通用します。
目論見書はファンドの5W1Hが書いてあるに過ぎない
はじめに結論から申し上げます。
5W1Hの情報を目論見書から拾って来ればファンドの骨組みはじゅうぶん理解できます。
ここではモデルケースとして「野村未来トレンド発見ファンド」の骨組みを目論見書から読み取ってみます。
私の予備知識の全くないファンドを無作為に選んだだけで、推奨の意図はありません。
(私に面識ないファンドなら何でもよかったのです)
先に宣言した通り、このファンドの目論見書も内容把握に3分かかりませんでした。
では実際に5W1Hを重要度が高い順に拾っていきましょう。
具体的には次の順番で「???」を埋めていきます。
- WHERE:???
- WHAT:???
- HOW:???
- WHEN:???
- WHO:???
- WHY:???
上記リンクから「交付目論見書」を開いてください。
WHERE(どこに投資しているか)、WHAT(何に投資しているか)
最も重要なWHEREとWHATは目論見書P2を見るともう答えが載っています。
「投資対象地域」は日本を含むグローバル、要は全世界です。
「投資対象資産」は株式。
つまり全世界株式ファンドなのだな、と分かります。
さらにP3の「ファンドの特色」にはその詳細が書いてあります。
投資信託で最も大事な情報は「どこの何に投資しているか」です。
シンプルなファンド名称なら名前だけでWHEREとWHATが分かるものですが、名称だけで分からなくても目論見書の冒頭にきちんと記載してあります。
ここまでで明らかになった情報をまとめておきましょう。
- WHERE:全世界
- WHAT:株式
- HOW:???
- WHEN:???
- WHO:???
- WHY:???
HOW(どのように投資しているか、コストはいくらか)
次のHOWは意味が2種類あります。
How toとHow muchです。
How to(どのように投資しているか)はP3「投資方針」に記載されていました。
うーん、よく分からない・・・
ここで分からなくても心配いりません。
投資方針はファンドの核とも言うべき情報なので、大抵の場合分かりやすく図解してくれているものです。
ここで頭を止めると時間がもったいないので、読み流して図解を探します。
次のページにどうやってポートフォリオを構築しているかをまとめたフローがありました。
このフローでようやく理解できました。
最初に儲かりそうなテーマをいくつか選んで、そのテーマの中からさらに儲かりそうな銘柄を探す方針のようです。
そうやって選んだ銘柄群でポートフォリオを構築しているのですね。
ちなみに今回は運用方針を何とか理解できましたが、まれに理解不能なファンドがあります。
小難しい言葉や初耳な横文字を羅列して理解を阻んで来るようなファンドはゴミ箱にポイでいいです。
都合よく儲かりそうな銘柄のつまみ食いができるかはさておき、これでHow toに相当する部分は分かりました。
次はHow muchを探しましょう。
コストは「購入時手数料」「信託報酬」「費用」あたりでテキスト検索すると大抵出てきます。
(たまに「信 託 報 酬」とか空けられてて出ないケースもありますが)
今回の場合はP13に「ファンドの費用・税金」にコストが記載されています。
購入時手数料はあくまで上限値で、実際にいくら取るかは販売会社が決定します。
最近ではネット証券は購入時手数料ゼロに踏み切っていますから気にしなくていいでしょう。
店頭で購入する場合は「購入時手数料かかるのが普通なんですよ」なんて態度でガッツリ取られるだろうから覚悟しましょう。
ここまでで明らかになった情報をまとめておきましょう。
- WHERE:全世界
- WHAT:株式
- HOW:儲かりそうなテーマを複数選定し、そこから儲かりそうな銘柄を探す。
信託報酬は年1.705%。 - WHEN:???
- WHO:???
- WHY:???
WHEN(いつからいつまで運用しているか)
アクティブファンドの場合、運用に期限が切られている事が多々あります。
安易に購入したら運用期間があと1年だったなんて嫌ですから、これまた目論見書で確認しておきましょう。
目論見書の「お申込みメモ」を探します。
今回の例ではP12に「信託期間」として記載されていました。
2025/11までしか運用予定がないようです。
あと4年のファンドを購入したいかは各自で判断してください。
私なら期限切られてる時点でゴミ箱行きかな。
信託期間は絶対ではなく、期限前に更新かかって延長されるケースもあります。
そこで絶対に運用が終わるわけではないのですね。
加えて、信託期間まで絶対に運用が続くわけでもありません。
すぐ下の「繰上償還」を見てみましょう。
口数が30億口下回ったら償還の恐れあり、のようです。
あくまで「恐れあり」程度のもので何ら絶対性はありません。
現に償還ライン割っていながらダラダラ運用が続いているゾンビファンドは腐るほどあります。
償還するのもめんどくさいんでしょう・・・
信託期間と繰上償還の情報を併せてWHENとしておきます。
ここまでで明らかになった情報をまとめておきましょう。
- WHERE:全世界
- WHAT:株式
- HOW:儲かりそうなテーマを複数選定し、そこから儲かりそうな銘柄を探す。
信託報酬は年1.705%。 - WHEN:2025/11まで、もしくは30億口が繰上償還ライン
- WHO:???
- WHY:???
WHO(誰が運用しているか)
重要な情報は手前のWHENまでで、あとは商品性に直接関係する情報ではありません。
WHOは運用会社を指します。
運用会社は目論見書のいちばん最初に出てきます。
何かあった時に問い合わせできるよう、問い合わせ方法ぐらいは調べておくと良いでしょう。
ここまでで明らかになった情報をまとめておきましょう。
- WHERE:全世界
- WHAT:株式
- HOW:儲かりそうなテーマを複数選定し、そこから儲かりそうな銘柄を探す。
信託報酬は年1.705%。 - WHEN:2025/11まで、もしくは30億口が繰上償還ライン
- WHO:野村アセットマネジメント
- WHY:???
WHY(なぜ運用するのか)
最後のWHYは全ファンド共通のため目論見書を見る必要もありません。
儲けるために運用しているのです。
社会のためとかお客様のためとかオブラートに包むケースは多々あるけれど、「儲けるため」以上にプリミティブ(根源的)な理由はありません。
運用の結果、基準価額が上がる事で保有者は収益を得ます。
運用会社・販売会社・信託銀行は純資産総額増加に伴いより多くの信託報酬を得られます。
このwin-winの関係を築く事がファンド運用の根源的な目的と言えるでしょう。
平たく言えば保有者サイドにしても金融機関サイドにしても共通して「儲けるため」なのですよ。
さて、これでファンドの骨組みは理解できたでしょう。
- WHERE:全世界
- WHAT:株式
- HOW:儲かりそうなテーマを複数選定し、そこから儲かりそうな銘柄を探す。
信託報酬は年1.705%。 - WHEN:2025/11まで、もしくは30億口が繰上償還ライン
- WHO:野村アセットマネジメント
- WHY:儲けるため(全ファンド共通)
他ファンドでも目論見書に書いてある順番や文言はかなり似通っているため、全く同じ手順で5W1Hを拾う事ができます。
どうです?けっこう簡単じゃなかったですか?
さいごに:目論見書はファンドの書類選考と捉えよう
目論見書でファンドの骨組みを把握したら初めて自分のニーズに合っているかを評価できるようになります。
私は先の例だとコストが高すぎるとか信託期間が気に入らないとかの理由で、目論見書見ただけで切り捨ててしまうと思います。
目論見書だけで「ダメだこりゃ」を言えてしまうファンドはホントに多いのよ・・・
目論見書はポートフォリオ採用オーディションの書類選考にあたると考えるとスッキリするでしょう。
全てのファンドをガッツリ選考しているとそれこそ時間がいくらあっても足りません。
ファンド選びの時短ワザの一つとして、目論見書の読み方はしっかり覚えておきたいものです。
以上、目論見書を3分で読むコツでした。
【次回予告】さーて、次回の愚者小路さんは
愚者小路です。
ブログの記事作成を習慣として続けてはや3年以上経ちました。
3年ちょっとでついに300記事に到達したので251~300記事からオススメ記事をピックアップしてみます。
ありがとうございます。
次回もまた見てくださいね。
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