投資信託ビギナーの方向けの連載記事 第8回です。
連載を通して「右も左も分からない投資信託初心者が自分で投資信託を選べるようになる」ことをゴールとしてナビゲートさせていただきます。
今回は少し趣向を変えて、投資信託の解約(売却)で現金化するまでに営業日ベースでどれぐらいかかるのかをおさらいしておきます。
【序論】投資信託の現金化にかかる営業日数を把握しておいた方がいい理由
投資をするうえで、リスクに晒す資産と生活防衛資金という線引きは程度の差はあれ誰にでも必要となります。
生活防衛資金というのは当面の生活費や何かあった際に捻出できるお金を意味します。
「生活防衛資金は普段の生活費の〇か月分用意しておきましょう」と説明されがちですが、明確な正解がありません。
仕事・家族・環境・性格によって答えがいくらでも変わってくるからですね。
もちろん、いっぱいストックしてあった方が安全ではあります。
だからって「最低でも生活費の5年分を貯めてから投資を・・・」なんて言い出したらいつまで経っても投資なんて始まりません。
20代で投資のスタートを切れる人がほとんどいなくなるだろうねぇ。
実は生活防衛資金がどれぐらい必要か考えるうえで、投資信託の現金化にかかる期間は重要な意味を持ちます。
と言うのも現金化が思ったよりもすぐに出来るのなら、生活防衛資金はそこまでたくさんストックしておかなくて済むかも知れません。
(お金が要り様になった時に損益関係なくスパッと売れる「思い切り」も必要ではありますが)
逆に現金化に思ったよりも時間がかかるのなら、生活防衛資金はそれなりの額をきちんとストックしておかないといけないかも知れません。
生活防衛資金に限らず、もしも急に投資信託を解約して現金を用意しなくてはならなくなった時、営業日ベースでどれぐらいかかるか知らなかったらどうでしょう。
現金化を急いでいるにも関わらず、いつ現金化ができるか見当がつかないという状況はかなりのプレッシャーではないでしょうか。
「いざ」がいつやってくるかは分かりませんから、今のうちに事前知識として覚えておきましょう。
なーに、忘れてしまってもいいんです。
ココに書いてあるってことさえ覚えておいていただけたら。
そのための備忘録ですから、何度でも見に来てください。
投資信託の解約(売却)注文から現金化までの一連の流れで解説
投資信託の現金化にかかる営業日数は商品ごとに異なります。
販売会社による違いはほとんどありません。
一連の流れを図解するとこんな感じです。
販売会社によって違う部分は最後の出金指示ぐらいかな。
(販売会社⇒保有者にお金が渡るところ)
解説をシンプルにするため、信託銀行はサイクルから除外しています。
「販売会社」「運用会社」が何を指しているか分からない場合は下記の解説記事を併せてご覧ください。
もし保有しているファンドがあれば、その目論見書を開きながら読み進めていただくと理解もはかどるかと思います。
必要な情報の9割は目論見書に載っていますので。
【販売会社】売却注文~約定まで
ネット証券などで解約(売却)の注文を出すところですね。
売却注文を出した時刻によって、申込受付日(注文の受け付けられる日)が変わります。
投資信託には申込締切時間が定められていて、この時間までに注文すれば当日受付として処理されます。
多少の例外はありますが、ほとんどの場合は15時となっています。
申込締切時間は目論見書の「手続・手数料等」に記載されているので確認してみましょう。
最速で現金化しようと思ったら、申込締切時間前に売却注文を出すようにしてください。
ちなみに約定金額は当日の基準価額とは限りません。
- 申込受付日の基準価額が採用される商品
- 申込受付日の翌営業日の基準価額が採用される商品
それぞれありますので、これまた目論見書の「換金価額」を確認しましょう。
同シリーズの商品だからって全て同じ取り決めとは限りません。
例としてeMAXIS Slim国内株式(TOPIX)と新興国株式インデックスの基準価額採用日を比較してみます。
【運用会社】換金資金の準備~受渡日
販売会社経由で売却注文を受け取った運用会社は換金資金を準備します。
※解説をシンプルにするため割愛しましたが運用会社は売却指示を出すだけで、実際のファンド内資産の売却は信託銀行がやっています。
ファンド内の資産を売却するなり、手元にキャッシュがあればそれを充てるなり、受渡日と呼ばれる締切までに売却額を販売会社に渡します。
一連のプロセスの中でここが最も長く、現金化のボトルネックとも言える箇所です。
受渡日とは換金代金の用意にかかる営業日数のこと
受渡日は目論見書の「換金代金」に記載されているので確認してみましょう。
一般的に国内のファンドほど受渡日は短く、海外のファンドほど受渡日が長く設定されています。
同じシリーズのファンドを比較すると一目瞭然です。
- eMAXIS Slim(国内株式)TOPIX:4営業日目から
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス:5営業日目から
- eMAXIS Slim 新興国株式インデックス:6営業日目から
投資対象の取引市場によって換金にかかる営業日が異なるようですね。
受渡日については「換金申込受付日から起算して〇営業日目から」と記載されていることに注目。
表記上は「換金申込受付日から起算して〇営業日目に」ではありません。
つまり状況によっては受渡が〇営業日より後になってしまう可能性もあるという含みが持たれているわけです。
とは言えこれは不測の事態に対する但し書きのようなものだし気にしても仕方ないので、〇営業日目に引き渡してもらえるだろうと見積もっておきましょう。
【再び販売会社】出金指示~出金完了
保有者が自ら出金指示を出すと、販売会社は保有者自身の預貯金口座に現金を振り込みます。
ここが現金化プロセスのゴールですね。
実は先ほどの運用会社からの売却代金受け渡しがある前に、あらかじめ出金指示を出しておくことができます。
売却注文が約定して預り金に反映されていれば出金指示を出せるものの、実際に出金完了となるのは売却代金の受け渡し後となります。
つまり受渡日にドンピシャのタイミングで出金処理されるよう出金指示を出しておけば受渡日と同営業日に出金完了とできるのです。
たとえば出金指示が翌営業日に処理される販売会社であれば、受渡日の前営業日に出金指示を出しておけば良いのです。
受渡日を待ってから出金指示では(販売会社によっては)出金完了が受渡日の翌営業日となってしまう可能性があり、1営業日分のロスとなります。
最速現金化を目指すなら出金指示は先んじて計画的に出しておきましょう。
【ネット証券別】出金解説ページまとめ
出金指示の仕様は販売会社によって異なるため、何時から何時までに指示を出せば良いかは販売会社の公式サイトをご確認ください。
参考までに主要なネット証券の出金指示解説ページのリンクを貼っておきます。
各ネット証券の解説を見ながら、いつ何時に出金指示を出しておけば受渡日に即出金完了できるかを把握しておきましょう。
現金化までの営業日数をざっくり見積もるとしたら
投資信託の解約(売却)注文から自身の預貯金口座に現金が振り込まれるまでの各プロセスにかかる営業日数を解説しました。
以上のプロセスを踏まえると、国内ファンドなど受渡日が短い商品なら4~6営業日(1週間前後)で現金化できます。
新興国ファンドや全世界ファンドといった受渡日の長い商品なら現金化に6~8営業日(2週間弱)は必要です。
ポートフォリオ組んで国際分散投資をしている場合、受渡日が長めの新興国ファンドをベースに考えるべきでしょう。
さらに途中にイレギュラーな祝日があった場合も考慮すると、投資信託の現金化にはざっくり2週間フルにかかるぐらいに見積もっておけば確実性が高いかと思います。
「ざっくり2週間」なんて待っていられない!
お金が要り様になったからってそんなスパッと売れる自信ない!
とお思いなら、生活防衛資金は生活費の半年~1年分とか潤沢に持っておいた方が精神的に良いでしょう。
「ざっくり2週間」程度なら問題ない。
急にお金が要り様になったからって2週間の猶予もないなんて考えにくいでしょ。
とお思いなら、生活防衛資金は生活費の2~3か月分でどうにかなるかも知れません。
以上、投資信託現金化にかかる営業日数の解説でした。
ちなみに私はけっこう後者寄りかなぁ。
(2~3か月分あれば何とかなる派)
もちろん人それぞれ答えは分かれていいんだからね。
【検証編】実際に営業日数えながら解約(売却)プロセスを観察してみた
検証前提
検証用にeMAXIS Slim 国内株式(日経平均)を1000円分購入しました。
このファンドを売却して実際に何営業日かかるか観察してみます。
換金に関係する各条件は下記の通り。
いずれも目論見書に記載されているのでしたね。
- 申込締切時間:15時までに売却注文出せば当日受付
- 約定金額:申込受付日の基準価額で約定
- 受渡日:申込受付日から起算して4営業日
販売会社は私のホームであるマネックス証券。
出金以外は販売会社による違いがないことは前述しましたね。
では、これから売却注文を出してみましょう。
スタートは2020/04/02(木)としますので、出金完了までの想定スケジュールは下図のような感じです。
1営業日目:売却注文を出した当日に申込受付と約定完了
2020/04/02の朝に売却注文を出したため、申込締切時間には間に合っています。
申込締切時間に間に合ったので当日受付&当日約定です。
もうその日の夜には売却額が買付余力に反映されていました。
ただし買付余力は預り金(出金可能額)とは必ずしも一致しません。
現に出金可能額はゼロのままです。
出金可能額への反映を待ちましょう。
実は事前にマネックス証券のサポートには売却~出金プロセスについて問い合わせ済でして、出金可能額の反映タイミングについても教えていただいています。
売却代金は、約定日の翌日より、証券口座のお預かり金に反映いたします。
出典:マネックス証券への問い合わせメール回答より抜粋
受渡までの期間が長い銘柄の場合、残高反映後であっても出金可能額には反映しない場合がございますのでご承知ください。
約定日の翌日ってことは、明日にはもう反映してもらえるってことだね。
明日を待とう。
2営業日目:あれ?約定翌日なのに出金可能額に反映されないぞ?
1営業日目に約定も済んでいたので、注文状態も「受付中」から「約定済」に変わりました。
しかし出金可能額はゼロのまま。
夕方17:00過ぎの時点(値洗いが終わってから)で確認したのですが、出金可能額は反映されませんでした。
想定外ではありますが私の方ではどうしようもないので翌日にまた観察することにしました。
2営業日目~3営業日目の隙間(週末):出金可能額に反映されたので出金指示を出そう
結局、出金可能額の反映が確認できたのは2営業日目の翌日、4/4(土)でした。
もしかしたらマネックス証券の回答通り2営業日目、4/3(金)の夜遅くにしれっと反映されていたのかも知れませんが、私が観察できたのは4/4(土)の朝でした。
細かい確認のしようがないし、最速出金までのプロセスに滞りが出るような内容ではないため置いときます。
出金指示を出す前に、マネックス証券の出金仕様を確認しておきましょう。
週末か3営業日目の20:28までに出金指示を出せれば4営業日目に売却代金の引き渡しと同時に出金が完了する想定です。
忘れないうちに出金指示を出しておきます。
これで私がやるべき作業は全て終わりました。
あとは4営業日目(4/7)の出金完了を見届けるだけです。
4営業日目:受渡日に即出金完了
出金予定日を受渡日にドンピシャで合わせられたので、無事に即日出金が完了しました。
結果、本編の解説内容通りだったということでエビデンス含め納得いただけたでしょうか。
なんかピンと来ないと思ったら、自分で適当なファンドを少額売買してみよう。
自分事になれば急に理解も進むと思うよ?
以上、【検証編】でした。
【次回予告】さーて、次回の愚者小路さんは
愚者小路です。
ようやく当ブログが150記事を達成いたしました!
これもひとえに皆様のご愛顧の賜物でございます。
ここで50記事ごとの振り返りを行います。
ありがとうございます。
次回もまた見てくださいね。
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コメント
ありがとうございます。投資初心者ですが、痒い所に手が届く情報で助かりました!