今回はあなたの投資家としての意識を一歩前に進めるマンガの話をします。
「どうせインベスターZあたりでしょ?」と思うなかれ。
そのマンガの題材は投資の対極にある「ギャンブル」なのです。
迫稔雄「嘘喰い」(全49巻)が教える投資のエッセンス
ご紹介するのは迫稔雄「嘘喰い」。
ヤングジャンプで連載していた作品で、全49巻で完結しました。
天才ギャンブラー「斑目貘」が数々の手練手管の切れ者たちとギャンブル勝負をしながら、ギャンブル勝負の立会と取り立てを担う異能の秘密組織「賭郎」をその手に収めるため「屋形越え」と呼ばれる大勝負に挑む話です。
ギャンブルと暴力が2大テーマであるため、その手の話が苦手な方はご敬遠ください。
ギャンブルとか暴力とか連呼してると検索エンジン(主にGoogle)に嫌われちゃうぜぇ・・・
あわわわ・・・でも語っちゃお。
ギャンブルが題材でありながら斑目貘をはじめとする登場人物の金やリスクに対する言動/思考は非常に筋が通っており、一投資家である私が読んでもたびたび「投資の真理をよくここまで端的に表現したな!」と驚かされました。
投資とギャンブルは対極にある行為ですが不確実性を扱う点においては共通しているので、学べる事が多いのもそれほど不思議ではないでしょう。
そんな嘘喰いの言葉から、投資家としての意識を一歩前に進めてくれる教えを4つ紹介します。
ストーリー部分には一切触れないのでネタバレの心配は無用です。
金はまだ見ぬ自分の分身
金・・・大金に心を乱されるな
金に魔力を感じる人間・・・多くの人間にとって金ってのは・・・
まだ見ぬ自分の分身みたいなもんなんだ!分身が集まれば集まるほど人間は・・・良くも悪くもその・・・まだ見ぬ自分に近づいていく・・・
(略)
世の中には 金があれば己の意のままに出来る事があふれている・・・
結果・・・金により理性や道徳の衣は破られ怪物が生み出される!だから梶ちゃん・・・金に魔力を感じるな!金は・・・金だ!
出典:迫稔雄「嘘喰い」3巻 P73-75
ライターの火で燃える紙切れ 血・・・肉通う命より薄っぺらいんだ
大きな金額が動くと自分が自分でないみたいに意外な行動を取ってしまうのはギャンブルも投資も同じ。
投資で暴騰暴落に心が揺さぶられている時、投資家はまだ見ぬ自分と対峙する事になります。
お金の魔力も魅力も重々承知しているからこそ、そのお金が増えたり減ったりといった危険に晒されるとまだ見ぬ自分があなたの心をジャックします。
長期投資のはずだったのに、暴騰時にまだ見ぬ自分は「値上がりしたんだから、利益が減る前に利確しろ!」と囁くかも。
長期投資のはずだったのに、暴落時にまだ見ぬ自分は「いったん売って、下がり切ったらまた買えばいいじゃん」と囁くかも。
嘘喰いの言葉を借りれば、世の中には金があれば己の意のままに出来る事があふれています。
だからこそ、金を得る事と力を得る事はイコールなので人は利益に貪欲になります。
反対に金を失う事と力を失う事はイコールなので人は損失に臆病になります。
そんな時にこの教えを心で理解していれば、きっとまだ見ぬ自分の囁きを聞き流す事ぐらいはできるはず。
資産運用における最大の敵は価格変動ではなく、お金の魔力で召喚される「まだ見ぬ自分」です。
その存在を認めるか、「いやいや自分はいつだって冷静沈着だし」といって存在を否定するかであなたの資産運用は大きく方向性を変えていくかも知れません。
ゼロサムゲームにゃ弱者が必要
ありがとう ありがとう・・・
俺達の糧 アブク銭をありがとうよ
困るんだよ・・・お前のような弱者がいなけりゃ架空請求に迷惑メール ネット詐欺やオレオレ詐欺が未だにあるのは何故だと思う?
未だに騙される・・・お前のような弱者がいるからだよ(略)
弱者がいるから 強者は喰らい デカくなる!!
出典:迫稔雄「嘘喰い」3巻 P123-125
非常に当たりの強い言葉ではありますが、ゼロサムゲームの真理と言っても過言ではありません。
投機やギャンブルといったゼロサムゲームの世界では誰かの負けで他者が潤います。
言い換えれば、誰かが損してくれないと誰も儲からないのです。
右も左も分からない初心者に「みんなやってるよ!」「そんな危なくないよ!」とハイレバ投機に誘い込む人の真意は何でしょうか。
ネット上に「この通りにやっていれば絶対勝てる!」とばかりにコンサル詐欺や情報商材の話が溢れかえっているのはどうしてでしょうか。
それは彼らがエサとしての弱者を渇望しているからに他なりません。
明らかな「やられ役」がいてくれれば既存プレーヤーの勝率は上がる。
先に挙げた言葉を思い出せれば、フラフラ誘われるままに強者に捕食されてしまうギリギリ手前で踏みとどまれるかも知れません。
一見魅力的な話にはくれぐれも冷静でありたいものです。
以前この辺の話を図解も込みで記事にしています。
お時間あればこちらもどうぞ。
認知負荷がかかり過ぎた時、投資家はどう動くか
人間は知らない事や難しい事を理解しようとすると無意識にブレーキがかかります
認知負荷というものです脳は負担を避けようと 盲目的に そして単純に 自分にとって都合良く・・・答えを導き出すのです
出典:迫稔雄「嘘喰い」47巻 P40
今の貴女のようにね
さて、投資においてどんな時に投資家の感情リスクが顕在化するでしょうか。
市場の上昇局面、下落局面でめまぐるしく変わる状況の中、「買う」「何もしない」「売る」の3択を迫られた時、心のボラティリティがMAXになる場合が多いかと思います。
考える事に疲れ切った果てに
これ以上考えたくない
これ以上不確実性に晒されたくない
と思考停止的に市場から逃げ出してしまうケースの何と多い事か。
「とりあえず利確」
「いったん売って、下がり切ったら買い戻すつもり」
「先行き見えない状況はとりあえず現金持っておかないと」
市場からの逃走を正当化するロジックを脳は全力で作り上げます。
しかしそのロジックも嘘喰いの言葉を借りれば、盲目的かつ単純に自分にとって都合よく導き出した答えと言えるのではないでしょうか。
つまり投資家の認知負荷が許容量を超えてしまうと、第三者的には理解しがたい非合理な投資行動に走ってしまいやすくなるのです。
認知負荷の許容量をダムとすれば、それはまさに認知ダムの決壊。大災害必至です。
もし身近に暴騰暴落で許容量超えちゃってアワアワしてる人がいたら、冷静になるよう声をかけてあげたいところだけど・・・
声かけたところでその言葉を処理できるだけの認知能力がもう残っていない可能性が高いね。
残念だけど認知ダム決壊寸前に至った時点でほぼ詰んでいるんだよ・・・
ではどうやったら認知負荷が許容量を超えてしまう事態を避けられるか。
答えは極めてシンプル。認知をしない。
モノを考えなければ認知負荷はかかりません。
インデックス投資のベテラン勢は「現時点で分からないものをいくら考えても仕方ない」と達観しています。
加えて見据える先がはるか未来のため日々の価格変動にも興味を持ちません。
だから「今は買いか売りか」「これからどう動くだろうか」といった認知負荷がほとんど溜まらないわけです。
ゆえに認知ダム決壊のリスクも非常に小さいのです。
「分からない」を心の底から受け入れてる投資家は強いよ。
半ば自画自賛にもなってしまうけど。
投資に限らず、日常には認知負荷の溜まる作業は腐るほどあります。
市場にべったりで認知資源を消耗するより、仕事や家庭などあなたが本当に大事にしたい対象に認知資源を割り当ててほしいものです。
私だって市場で認知資源を使い切っていたら、このブログは存在しなかったでしょうから。
あなたには種をまき続ける貪欲さはありますか?
人は知らず知るに関わらず 種をまき生きている
出典:迫稔雄「嘘喰い」30巻 P43
大きく実った果実を必ずしも手に出来るとは限らない
己のまいたものに 一生気が付かない者もいる
全てを注いだ種を 踏みにじられ横取りされる者もいる
(愚者小路補足:橋の上を歩く3人組。川辺の土手のところにトランプと思しきカードが刺さっているのを遠目に見てある男が言った)
「あの川辺に刺さったカードが何なのか賭けをしないか?」
3人組の一人がそう誘いをかけた
たまたま通りがかった橋だったカードを当て 儲けた男
(愚者小路補足:言い出しっぺの男のこと)当然だ
そのカードは何か月も前に自分が刺したものだった彼は賭けの為だけに街のあらゆる所にタネを仕掛けていた
出典:迫稔雄「嘘喰い」37巻 P157
当然 一生使われる事なく放置されるものも少なくなかった
嘘喰いってどんな話かと聞かれたら私は「種をまく話だ」と答えるぐらい重要なテーマです。
と同時にインデックス投資家にとっても重要なテーマとなり得ます。
インデックスファンドによる国際分散投資は世界中に種をまく投資手法です。
どこにいつ種をまけば、芽が出て実りが得られるかは誰にも分かりません。
先の話で一生使われなかったタネがあったように、結果としてリターンに全く寄与しなかった投資対象も出てくるでしょう。
それでもインデックス投資家は全てを覚悟したうえであちこちに種をまき続け、じっと実りを待ちます。
話に出てきた男はギャンブラーでありながら、実にインデックス投資家的な行動を取っていたのです。
この話にグッと来た人は、大量収穫でないまでも現実的に実りを求めるインデックス投資家タイプ。
「ムダが多い」「やり方が幼稚」と思った人は、種をまく対象を絞ってピンポイントで実りを刈り取るアクティブ投資家タイプ。
私は前者についつい肩入れしちゃうけど、後者の気持ちだって分かるよ。
予想するのは楽しいし、予想が当たると気持ちいいからね。
インデックス投資は「楽しい」「気持ちいい」がないので、「楽しい」「気持ちいい」は投資以外のフィールドで探求します。
インデックス投資の仕事は、種をまいて実りを待つ。実りを待ちながらも追加で種をまき続ける。
たった2ステップです。
昨今の人気で「なんとなくインデックス投資」な人も正直増えていますが、気まぐれに種を掘り起こしたり、芽を摘んだり、種まきをサボりがちなタイプの人には向かないでしょう。
まとめ
迫稔雄「嘘喰い」から、投資に役立つ言葉を紹介しました。
ギャンブルマンガであるものの、お金やリスクに対する洞察は一投資家として心打たれるものがあります。
もちろんストーリーや迫力ある描写も魅力的なので、何か一気読みできるマンガないかなぁと思っていたらぜひ手に取っていただきたいです。
週刊連載当時にリアルタイムで理解追いついていた人がいたのかなと思えるほど難しいマンガでもあるのでじっくり読み込む事をオススメします。
以上、嘘喰いに教わる投資のエッセンスでした。
【次回予告】さーて、次回の愚者小路さんは
愚者小路です。
成人年齢が18歳に引き下げられる事で、18~19歳の方々が借金をはじめとする各種契約ができるようになります。
新成人が危険な目に遭わないようにと金融庁が金融リテラシーの向上を図る動画を公開しているのですが・・・
だいじょぶ・・・?コレ。
ありがとうございます。
次回もまた見てくださいね。
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