他人事じゃない!iDeCoは突然終わりを告げる
2019年6月、金融庁が発表した金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」をきっかけに世間では「年金2000万円問題」として年金制度への不安の声が挙がるようになりました。
老後資産を確保するための自助努力の一つとして確定拠出年金を利用することは税制面からも有用ではあるものの、制度上の問題点を抱えているという意見もあります。
確定拠出年金には個人型と企業型があり、2020年現在の制度では両方の型を併用することは極めて困難なのです。
たしかに確定拠出年金には所得控除など税制上有利なポイントはあるのですが、制度の複雑さが加入にあたり一種の「ハードルの高さ」となっている側面も否めません。
特に個人型から企業型へ移管する際は多くの手続きが必要なだけでなく、運用内容の変更を余儀なくされるなど多くのデメリットが発生する可能性があります。
今回の特集は「移管は突然に!?iDeCoから企業型DCになって損した投資家、悲劇の全容を語る」と題して全4回構成でお送りします。
iDeCo(個人型確定拠出年金)から企業型DC(企業型確定拠出年金)への移管を強いられた方の体験談から現行制度の問題を探ってまいります。
取材に応じてくださったのは会社員の愚者小路(仮名)さんです。
愚者小路(仮名)と申します。
都内の会社に勤務しています。
まず私がiDeCoから企業型DCになった背景から話させてください。
わずか4か月という短命だったiDeCo
【2018年末】勤務先にiDeCoの事業所登録申請書を書いてもらったのに
答え:勤務先のボスにiDeCoの事業所登録申請書の記入と捺印をお願いしてるところ
実は割と最近までiDeCo加入にためらっておりました。
やはり拠出したお金は60歳まで引き出せないというルールは看過できないリスクではないかと考えていました。
しかし一方で優れた所得控除性能を考えると利用しないのはもったいない。
そんな揺れ動く投資家心理に終止符を打ち、iDeCoの加入に踏み切ったのは2018年末のこと。
「個人型」確定拠出年金であっても加入には事業所の登録申請書が必要なのでボスにお願いして記入していただきました。
社員数が極めて少ない会社でしたので、私以外にiDeCo加入の前例があったかどうか定かではありません。
そもそも業務と関係ない個人の話なのに会社を巻き込まないといけないことは非常に気が重く、申し訳なく思いました。
個人型確定拠出年金という以上、手続きも個人で完結できるよう配慮してほしいものです。
ボスのご協力もあり2018年末にiDeCo加入手続きが済み、2019年1月から拠出開始です。
iDeCoありきの積立プランとポートフォリオ管理体制を整えるなど、当時の私はやる気に満ちておりました。
【2019年2月】愚者小路くん、ウチの会社3月いっぱいで消滅するんだ
2019年から少しは所得税額も抑えられるようになるかとワクワクしていたある日の出来事でした。
私の作業している現場にボスが来て、急遽面談が設けられました。
面談で説明された内容を端的にまとめると、下記の通りです。
- この会社は4月から、とある会社に吸収合併される。
- 今我々が所属しているこの会社は3月末日をもって解散となる。
飲み込みの悪い私がどうにか状況を整理していると、胸中に嫌な予感が去来しました。
そう。もし次の会社が企業型DCを採用していたら、私のiDeCoはほぼ間違いなく即打ち切りとなってしまうのです。
その辺はボスもご存知ないようで、今後の説明を待つことになりました。
私は企業型DCを採用していないことを祈るしかありませんでした。
【2019年3月末】嫌な予感は的中。やっぱり企業型DCを採用していた
移籍先の会社の説明会が開催されました。
資料一式の中に確定拠出年金に関する書類があったので、おそるおそる中身を確認してみました。
企業型確定拠出年金制度へご加入されますと、以前に確定拠出年金に加入されていた方は、本確定拠出年金制度へ資金を移管する必要があります。
つまりこういうことです。
企業型と個人型の併用は認めないので資金は全て移籍先の会社の企業型DCに移管するようにと。
私のiDeCo終了が確定した瞬間です。
笑い話にできるぐらい、タイミングの悪い話でした。
短い間ありがとう。
いつかまた会おうね・・・
転職の意思がなくてもiDeCoから企業型DCへの移管は発生しうる
少なくとも企業に雇用されているiDeCo加入者は油断大敵です。
「しばらく転職する気ないし関係ないね」なんて思ってはいけません。
加入者本人が転職しないでも企業型DCへの移管を余儀なくされるパターンは2種類。
- 吸収合併に伴い、企業型DCを採用する企業に取り込まれた(私のパターン)
- 現在の勤め先が企業型DCの採用を始めた
企業がその在り方をめまぐるしく変えることも珍しくない現代、iDeCo運用が突然終了する可能性は十分にあります。
決して他人事ではありません。
いざ移管となれば、企業型DCは商品ラインナップも手続きも不明なまま拒否権なく迫ってきます。
そういう「いざ」のお役に立てればと思い、私の踏んだ手順や発生コスト、失敗談に至るまでセルフ丸裸でお伝えします。
実例を大体知っておけば、移管が必要になった時もスムーズに動けるかも知れません。
私と同じドジを踏むことも回避できるかも知れません。
次の【中編】ではiDeCo⇒企業型DCへの移管手続きについてまとめていきましょう。
全4回の連載はこういう構成を想定しております。
iDeCoから企業型DCになって損した投資家、悲劇の全容を語る
- 【前編】iDeCoが突然終わるとき(今ココ)
- 【中編】
- 【後編】
- あとがき
【次回予告】さーて、次回の愚者小路さんは
愚者小路です。
iDeCoから企業型DCへの移管手続きってなかなかに面倒です。
後から振り返れば「こんなもんか」と分かるのですが、私は手探りで進めていく過程で大きなミスをやらかしました。
ありがとうございます。
次回もまた見てくださいね。
応援していただくとより多くの方にご覧いただけるし、投稿モチベーションも上がります。
↑いつもランキング向上にご協力ありがとうございます!
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます
・・・なんて機能はないけれど、本件と関連が深い記事です。
もう1ページ、いかがですか?
コメント